生活での介助量を把握する機能的自立度評価法(FIM)
リハビリテーションは,脳卒中や脊髄損傷などの中枢神経疾患,大腿骨や背骨の骨の骨折などの整形疾患,または神経難病などにより生活に不具合が生じている方々が対象となってきます.
その方の生活を送るために不具合を生じた方々が,再び自分らしい生活が行えるように,心身機能そのものの改善を直接促していく介入や,これまでと違った動作方法を実践したり,環境の調整をしたりする等を通じてが行われていたりします.
こういった目的に対する様々な取り組みに対して,生活を送る上での能力を介助量の観点から評価するために作られたものに,機能的自立度評価法(Functional Independence Measure:FIM)があります. FIMによる評価は,リハビリテーションを受ける際の手続きとして必要となっているリハビリテーション実施計画書にも掲載されていますので,リハビリテーションを受けるご本人,またそのご家族が実施計画書に目を通した際の参考になるかもしれません.
FIMに設けられている18の評価項目
FIMは,全部で18項目からなります.そのうちの13項目は,日常生活行為に関する「運動項目」で,残りの5項目は,コミュニケーションや生活を送る上で必要な「認知項目」で構成されています.
ニカクメでは,実際の当事者の方々に伺ったり,療法士が実際に提案してできるようになった方法を,これまでと違った方法として提案し,自分でやりたいけれど,難しくてできない,やり難いのでやめよう,と思っていたことに「やってみよう!」「できる!」というきっかけを提供して,生活での困りごとを解決していこうとしているものですので,各項目に関連した内容の動画と合わせて説明していきます.
運動項目
1.食事:
食器を使い一口大に食物を口に運び,噛み,飲み込むまでの行為
※食事関連動画一覧は,こちら>
2.整容:
手洗い,洗顔,歯磨きなどの口腔ケア,整髪,化粧やひげそりといった身なりを整える行為
※整容に関する動画一覧は,こちら>
3.清拭(せいしき):
お風呂で,首から下の背中を除く部位を洗う行為
※清拭やお風呂に関連する動画一覧は,こちら>
4.更衣(上半身):
腰よりも上の衣服の着脱や,義肢装具の着脱行為
※上衣更衣に関連する動画一覧は,こちら>
5.更衣(下半身):
腰よりも下の衣服や下着,靴下,下肢装具を着脱する行為
※下衣更衣に関連する動画一覧は,こちら>
6.トイレ動作:
トイレの前で,ズボンや下着を上げ下げし,排泄後にティッシュ等で清潔を保つための行為(生理用品等の使用も含む)
7.排尿管理:
尿瓶など器具やお薬の使用,失禁後の処理などの排尿管理に関わる行為
8.排便管理:
排便のための器具やお薬の使用,便失禁後の処理などの排便管理に関わる行為
9.移乗(ベッド・椅子・車椅子):
立ち座り動作を含み,各場所間の乗り移る行為
10.移乗(トイレ):
便器への(からの)乗り移る行為
11.移乗(浴槽・シャワー):
浴槽・シャワー室への(からの)乗り移りに必要な介助量
12.移動(歩行・車椅子):
屋内での歩行,または車椅子での移動
13.階段:
12-14段の階段昇降
認知項目
1.理解:
身近な生活のことから,政治や経済などの複雑なことを見聞きした内容を理解すること
2.表出:
自分の意思や意見,その他の情報を言語や非言語での表現すること
※表出に関連する動画一覧は,こちら>
3.社会的交流:
親しい他者との交流したり,社会的状況へ順応すること
4.問題解決:
生活上での問題を解決したり,適切な決断をすること
5.記憶:
人の顔,1日の予定,依頼されたことなど生活に必要な情報の記憶すること
FIMのスコアとその意味
FIMの採点は,各項目は1から7段階で能力を評価され,最低で18点(18項目×1点),最高で126点(18項目×7点)になります.
▶︎7点:完全自立
評価対象の行為が,他者の介助や監視も必要とせず,適切な時間で,自助具や補装具などを使わずに安全に行える
▶︎6点:修正自立
評価対象の行為が,自助具や補装具を使えば,他者の介助や監視も必要とせず,適切な時間で,安全に行える
▶︎5点:監視
評価対象の行為をする際に,介助者の介助は必要としないが,行為に必要になる準備や,促し,見守りが必要となる
▶︎4点:最小介助
評価対象の行為を完遂するために,他者による介助を必要とし,その介助量が全体の25%以下である.
▶︎3点:中等度介助
評価対象の行為を完遂するために,他者による介助を必要とし,その介助の量が全体の25%ー50%未満必要である.
▶︎2点:最大介助
評価対象の行為を完遂するために,他者による介助を必要とし,その介助の量が全体の50%ー75%未満必要である.
▶︎1点:全介助
評価対象の行為を完遂するために,他者による介助を必要とし,その介助の量が全体の75%以上必要である.
FIMの採点の特徴は,対象者が自分で「できる」最大能力を評価しているのではなく,実生活で実際に「している」状況を評価していることです.
したがって,つまり,自分で靴下や靴が履ける場合でも,実生活では靴下を履かせてもらっている場合には,介助量が発生するため,FIMとしては最高でも最小介助(4点)という採点がついたりします.この,スコアが下げる原因を解決することは,日常生活の中でご自身で行っている行為が増えるということなので,その要因が何なのか?,見定めることは非常に重要な視点だと考えています.
参考文献
千野直一 編,里宇明元,園田茂,道免和久著.脳卒中患者の機能評価 SAISとFIMの実際.シュプリンガー・フェアラーク東京.2003.
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